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レビュー

あまりにトルコより?

ガリポリ作戦について読んでいたら、英国側と記述があまりに異なる
ことが気になった。真実がどのあたりにあるにせよ、
せっかく日本語で読めるのだから、英国側の記述と
もう少し対照しやすいほうがありがたい。
つまり本書では、あまりに違うために英国側の文献と
比較対象のしようがないのだ。


孤高と誠意の独裁者

 19世紀から「瀕死の病人」と揶揄されてきたオスマン・トルコは、第一次大戦の敗北の結果、戦勝各国による侵食と分割の危機に直面し、文字通り滅亡の淵に立たされます。皇帝政府とイスラム・エスタブリッシュメントは何ら為すところを知らず、己の権益保全のためには国家の生命すら売り渡さん勢いです。
 この未曾有の国難に際し、中央政府に対して敢然と反旗を翻し、列強を向こうに回して戦い抜いた軍人政治家が「アタチュルク」ことケマル・パシャです。大戦中のガリポリ防衛戦で勇名を馳せたケマルは、「反乱将軍」の汚名を着せられつつも国民の圧倒的な支持を獲得し、4年間の苦しい救国戦争の結果、ついに列強を屈服させ、祖国の独立と尊厳を奪還するのでした。
そして戦後、帝政を打倒して国家元首の座に就いたケマルは、産業育成と政教分離という更に困難な戦いに赴くのでした。
 本書は、そんなケマル・パシャの生涯を描いた評伝です。当時のトルコが置かれていた社会的状況や国際的環境などが平易に語られており、彼の直面していた課題の重さが浮き彫りにされています。また、ケマルと同時代の人々からの聞取りなどが素材として活用されており、トルコの人々にとってのこの人物の存在感の大きさが見事に描き出されています。
 民族の尊厳を救うため、身の危険を顧みず敢然と立ったその心意気と、権力を自ら手離そうとした潔さには、真に敬服を禁じ得ないものを覚えます。世に開発独裁と言われるリーダーシップは枚挙に暇がありませんが、ケマル・パシャの如き、誠心誠意の人を棟梁に戴きえたトルコは、やはり幸運であったと言うべきでしょうか。